長崎『大蔵と天狗どん』
昔、長崎は八天岳の麓に働き者の百姓夫婦が住んでおった。
何も困ることはなかったが、たった1つ子供のいないのが悩みじゃった。 2人は八天岳におりなさる天狗どんに向かって、子供ができるよう毎日お願いしておった。

八天さん八天さん私たちに子供を授けてくだされ、よろしくお願いします。
そうして、ある晩のこと…

どうした?

八天岳の天狗どんがおらの腹へ飛び込んだ夢を見た…

おぉそりゃええ夢じゃ
やがてそれから10月10日が経って、元気の良い男の子が生まれた

天狗どんありがとうございました

名前は大蔵とつけました。これからもよろしくお願いします。
大蔵はすくすくと大きくなり、大変な力持ちとなった。

痛い・・痛いよー

ごめん、ごめん、力を入れすぎた。この干し芋やるから泣くのやめろ
大蔵は力も強いが、気も優しかった。そうして、親孝行のたいぞうは毎日家の仕事を手伝った。今日も干し草にする草を借りに八天岳に出かけた。すると…

大蔵…大蔵

誰じゃおらの名を呼ぶのは
岩の上には厳めしい顔をした天狗が座っておった。

ありゃ…

大蔵…お前は相撲が好きか?

ああ、大好きじゃ

よーし相撲を執ろう

よーし。これで草刈りは片付いた…さあかかってこい!

わぁ…!(やられる大蔵)
それから大蔵は天狗どんを相手に毎日相撲をとって遊んだ。そうして、大蔵はどんどん強くなって、村の中ではもちろん、近くの領内でも大蔵に勝てるものは誰もいなくなったのじゃった。
そこで大蔵は、日本一の相撲取りになろうと、江戸に登ることにした。

わしには、もうお前に教えることが何もない。よかろう、わしが持っている力をお前に授けよう。(ビリビリ…ドカーン!!)(ムキムキっ)

ありがとうございます。

じゃが大蔵よ。お前は根が心の優しい若者じゃ、人情に負けて、わざと相手に負けてやったりすると、その時はお前に授けた力がなくなってしまう。このことは必ず忘れてはならんぞ。

はい。天狗どんの言うことは必ず守ります。おら必ず日本一の相撲取りになってみせる。

それじゃしっかりやれ
そうしていよいよ、江戸へ向かうことになった

しっかりやれや。あとのことは心配せんでええからな。

体に気ぃつけてな

大丈夫じ…いい便りを待っていてくだせぇ
江戸に着いた大蔵大蔵賑やかな人通りにびっくりしたが…ある相撲部屋を見つけて、親方に頼み込んだ。

何っ!相撲取りになりてえんだと…まだ子供でねえか、じゃあ試しに相撲取ってみろぃい。

えいっ!!あれれれれれ。ごめんなさい、ごめんなさい

こりゃ強いわい。よし、弟子にしてやる。
こうして相撲取りになることができた大蔵は、 投げ技が早いところから、四股名も稲妻と勇ましい名前を付けてもらった。
稲妻という勇ましい名前の通り、大蔵は毎日素晴らしい取り口で勝ち続け、たちまち番付も上がったのじゃった。

いなずまー!!

さすが大蔵!!

わぁー!!(観客の声)
大蔵は、大きな相手を次々と負かしてしまうので、見に来るお客は大喜び、稲妻! 稲妻!と大変な人気者になった。
この場所の大蔵は負け知らずの白星ばかりでいよいよ明日は千秋楽ということになったその夜のこと…

どうしたんだ?竜ケ岳関!こんな時刻に…

実はの…明日わしの両親が田舎から出てくるんじゃ、 親たちは年寄りじゃで、先が短い、これが最後の相撲見物になるじゃろ…じゃが一今場所はずっと負け続けじゃ、明日はどうしても親たちの前で勝ちたいんじゃ。明日はあんたが相手…稲妻関、一生一度のお願いじゃ、 勝たせてくれんか、親たちを喜ばしてやりたいんじゃ

それはできん!わざと負けるなんて勝負の世界は真剣勝負じゃ!
そして、次の日はいよいよ千秋楽。稲妻が全勝優勝するじゃろうというので、お客は押すな押すなの超満員。

息子よ、頑張れよ

おっとう…おっかあ…今日こそは勝つでな

頼んだぞ息子
いよいよ取り組みが進んで、竜ケ岳と稲妻の勝負になった。

はっけよい、のこった
黒星続きだった竜ケ岳も今日ばかりは力が入った。

負けるでねーぞ

がんばれー!竜ケ岳!

竜ケ岳がんばれーっ
とその時!押しまくるタイゾウの目に、必死になって竜ケ岳を応援する両親の姿が目に入った

負けるでねえ…竜ケ岳…負けるでねえぞ
必死に応援する竜ケ岳の年老いた両親の姿にタイゾウは思わず力を抜いてしまった。

決まった

良かった、良かった…これでもう思い残すことはねえ

竜ケ岳〜!
それから大蔵は天狗どんが言うた通り、力が弱くなり誰とやっても2度と勝てなくなってしもうた。そうしてとうとう相撲をやめて、国へ帰った。

八天岳の天狗どん、おらあんたとの約束を破ってしもうた…勘弁してくれろ
こうして情けに負けて相撲をやめてしまった大蔵じゃったが、 あの時の涙を流して喜んだ竜ケ岳の両親のことを思い出すと、これで良かったのじゃと、気持ちがまた 晴れ晴れとしてくるのじゃった。
家に戻った大蔵は、また昔のように両親を助けて、百姓仕事に精を出したのじゃった。 そうして天狗どんからもらった陣痛力がなくなった大蔵じゃったが、まだまだ何をやっても、普通の人よりはずっと力が強かったということじゃ…めでたし、めでたし。
感想
情けは人の為ならず【「情けは人のためならず」とは,「情けは人のためならず」とは,人に対して情けを掛けておけば,巡り巡って自分に良い報いが返ってくるという意味の言葉です。です。】この物語は、それを教えてくれるとってもホッコリするお話です。こんな心あたたまる物語で埋め尽くされたら世界は平和になるのになぁ…☺️
コメント