福井『大根のびっくりぎょうてん』
昔、昔あるところにごぼうと人参とこんにゃくと 種芋と大根がおったそうな
なんじゃえ、みんなも集まっておったのかい。
その頃の大根は、今のように白くはなくて、薄い緑色をしておったそうだ
どすこいどすこいさあ、今日も相撲取ろうぜどすこいおおうどすこい
見合って見合ってハッケヨイ残った残った残った残ったこれない 大根の勝ち…
よーし今度はおらにゃ…
人参の次にヒョロヒョロした痩せっぽちのゴボウが現れた
ハッケヨイ残った残ったはい残った残った残った残った残った残った残った…
頑張れー!
ハッケヨイ残った残ったはい残った残った残った残った残った残った残った
頑張れー!
大根の勝ち!
今度はブルブルと体を震わせながらこんにゃくが現れた
頑張れ!頑張れ!今日こそ勝つんだぞー!
見合って見合ってハッケヨイ残った残ったはい残った残った残った残った残った残った残った
大根の勝ち!
一人ずつでは面倒じゃ束になってかかってこいよ…
やあ!とお!
残った残ったはい残った残った残った残った残った残った残った
おら行司だ…あ痛痛痛痛
あ痛痛痛痛
何度やってもいつもオラが1番だい…
大根は体が大きくて強かったので、いつも威張っておった
ほんに大根では強ええの ところで大根どんよ。おめえなら、この世の中で怖いものなんぞ、ありゃすめえな…
おら、この世の中で怖いもんなんぞ、なんもありゃせん
ほお…
そんなある冬の日のことだ
なー皆のしゅ寒くなってきたで、酒でも飲んであったまりてえのー
そりゃいいそりゃいい
酒なんぞ、久しぶりじゃの芋頭どん里まで一っ走り頼むわあ…
行くのはいいが、おら。1人では寂しいだで、大ごんどん一緒に里の方まで付き合ってくれんかの
おらがなんで行かなきゃならねんだ。おらいつも相撲で勝ってんだぞ…
の人参どどうじゃおめえ、一緒にいてくれんか
うん、うん、うん、おらあんまり顔が赤いで、大酒飲みじゃと思われるかもしれんでないかんこともないが、やっぱり嫌じゃ。
こんにゃく丼はどうじゃ
うんおら、体があんまりくにゃくにゃしとるんで、骨なしだと思われるかもしれねえんでな。弱ったこっちゃ…
ごぼうぞんぞうじゃ行ってくれるか。
俺はあんまり黒い顔しとるで、炭焼きの親父と間違われたら困るでの…
うーん、 誰も行くもがおらんのじゃ、この話はやめにしようさてと帰るとするか…
えーい!どいつもこいつもだらしがねーな。
じゃあ、大根どん言ってくれるか…
ええか、この中に1本だけ根っこのついた草があるそいつを引いたやつが、種芋と一緒に行くんじゃい 文句ないじゃろ。
大根の発案でくじ引きをすることになった
種芋行くぞ
こうして、飯田しっぺの芋頭と大根の2人はさえ酒を買いに出かけた。
あ…あ…寒いな。
何をゆうか、こんなのは寒いうちに入らん
あ…あ…
ところが今度は高い山から吹き下ろしの風がピューっと吹き降りてきた 吹き下ろしとは、高い山から北の里へ吹き渡る冷たい風のことじゃ
あ…あ…寒い寒い
ごちゃごちゃとうるさいやつじゃな
あゃゃゃゃゃ吹き下ろしじゃ
あ…あ…おろしじゃおろしじゃ大根おろしじゃ
大根は山からの吹き下ろしの風を大根おろしと勘違いしてしもうた
うわぁー
助けてくれーうわーうわーう助けてくれろーほらほらほらほら殺されるーすり下ろされてしまうよー助けてくれー助けてくれー助けてくれー助けてくれー助けてくれー
おーい大根どん大根どん大根どん大根どん…どうしたんじゃ
おらこの世の中に怖いもんなんかないって言うたが、実は大根おしだけは怖いんじゃ、 大根おろしにすり下ろされたりしたらおしまいじゃ
何言っとる。あれは卸しは卸しでも吹き下ろしの風じゃ
吹き下ろしの風
よっぽどびっくり仰天したんじゃの、顔が真っ白じゃぞ。
そうじゃったのか、お、また大根おろしかと思うたよ
あーはっはっはっはっはっはっ
それ以来、大根は薄い緑色から、今のように真っ白になったということじゃ、 体が大きくて、力が強い、大根にも怖いものがあったということじゃ、 それからは大根も決して威張ることなく、みんなと仲良く暮らしたということじゃ…めでたし、めでたし。
感想
確かに昔の大根はもっと緑が多かった気がするなぁ…今の大根が白い部分が多くなった経緯はこういうことだったのか(笑)
この物語は昔の大根はもっと緑だったんだよ…って話?(笑)
この物語は大根は煮るよりおろしが美味しいよって話?(笑)
この物語は根菜とコンニャクは煮物にすると相性がいいから仲良くしてねって話?(笑)
このように色々考えるのも、まんが日本昔ばなしの醍醐味です。
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